Netflix 水曜はじまり日記 Vol.1

3月21日・水
 雪まじりの雨。祝日にもかかわらず仕事で体調が悪い。疲れ切って眠る前に、『ラブ』シーズン3の第1話を見る。相変わらずウディアレンそっくりの主人公ガスが “気まずい”トラブルを連発。今回は友人と一緒に行く週末旅行の話で、彼女にSEXを断られてバスルームでスマホのポルノ動画を見ながらマスターベーションに励むのだが、Bluetoothでスピーカーにその音声が増幅され、皆が困惑すると言うトホホな展開。お約束のガスの気まずい言い訳も『ラブ』の持ち味で、思わず笑ってしまう。

3月22日・木
 多和田葉子の『言葉と歩く日記』を読む。彼女は毎日移動しながら言葉について深い考察を行っている。自分も移動しながらiPhoneNetflixを見ることが多いので、このブログもいわば『Netflixと歩く日記』なのだが、考察の深度はずいぶん浅い。考察する時間がないことを言い訳にしたい。『ブラックリスト』シーズン2の第8話を見る。このドラマを見続けている理由は、人を小馬鹿にしながら説教する腹黒いジェームズ・スペイダーの笑顔が魅力的だから。つい真似をしたくなり、鏡の前で少し練習する。

3月23日・金
 亡くなったはずの星野仙一が、講演会で聴衆のオバサマたちにバレリーナのように片足立ちでポーズをとり、写真を撮らせている夢を見る。意味が不明。移動中の電車内で『ハイライフ』シーズン2の第1話を見る。合法大麻の店舗が舞台のコメディだが、相変わらずキャシー・ベイツが怪演。本当にどうでもいいエピソードが満載で、脳がしびれてくる。大麻を吸ってハイになれば人生は素晴らしいというシンプルな設定が素晴らしい。

3月24日・土
 秩父宮でサンウルブス対チーフスの試合を見る。外苑の桜が満開。ワインとクッキーで観戦。試合は完敗だった。新しいドラマを開拓しようと思い、いくつか予告編を見て、『サンタクラリータ・ダイエット』を選択。シーズン1の第1話。ある日、妻(ドリュー・バリモア)が大量のゲロを吐き心臓の鼓動がなくなるが、大胆で自由な人格(ゾンビ)に変身し、夫と娘が悲惨な騒動に巻き込まれてゆくというコメディ。こう書くと変哲もないB級ドラマなのだが、演出に独特の “間”があって期待を抱かせる。

3月25日・日
 明治神宮の芝生広場で、片岡義男のエッセイコレクション『僕が書いたあの島』を読む。あの島とはハワイのこと。本の中にホノルルの公園の芝生の上で『アメリカの鱒釣り』を読むシーンがあったので、久しぶりにブローティガンを読みたくなる。『サンタクラリータ・ダイエット』シーズン1の第2話を見る。クールな娘役のリヴ・ヒューソンが面白い。配信はシーズン2まであるが、どうやって続いていくのかちょっと心配になってきた。
  
3月26日・月
 ジムで走りながら、『メンタリスト』シーズン7の第10話を見る。祭りが終った後のような寂寥感が漂うシーズン7だが、今回はその中でもひときわ悲しいストーリー。思えば海外ドラマを本格的に見はじめたのがメンタリストなので、あと3話で終ってしまうと思うと哀しい。面白い長編小説を読み終える感じに近い。シーズン1では若かったサイモン・ベイカーも歳を重ねたものだとしみじみ。残りはゆっくり噛み締めるように見よう。

3月27日・火
 1週間前は雪が降ったが、今はもう春のような陽気。仕事の合間に“佐川前長官の証人喚問”を見るが、つまらない役人の答弁に辟易する。気を取り直して、『デヴィット・レターマン・今日のゲストは大スター』を見る。オバマ元大統領、ジョージ・クルーニーときて、3回目のゲストは“ノーベル賞をとった少女”マララさん。彼女と佐川前長官と比べると、羽衣をまとった天女と地獄を這いずり回る虫ケラくらい人間性に差がある。デヴィット・レターマンの質問はいつも率直で、その裏に相手への敬意があるから、ゲストも胸襟を開いて話せるのだろう。清冽な蒸留酒を飲んだような気持ちになる。


『ライン・オブ・デューティー』 シーズン1, 1~2話 Line of Duty Season1 Episode 1, 2

英国の警察内部の不正を監視する部署「AC-12」を舞台にするBBC制作ドラマ。英国アカデミー賞を取るほど評価が高く、現在シーズン4まで放送しており、シーズン5も制作が決定しているとのこと。

英国らしい陰鬱でシリアスなドラマかと思いきや、意外とエンターテインメント性が高く見やすい。正直なところ、脚本や演出に粗はあるし、英国ドラマらしく美男美女の登場も少ない。だが、なんだかんだいって入り込ませてしまう力がある。まだ2話しか見ていないので断定はできないが、英国版「半沢直樹」っぽいか? といっても、半沢直樹は最終回しか見ていないが。とにかく、サラリーマンの最大の関心事である「社内政治」と「人事」を扱っている上に、犯罪が絡んでくるため、面白くなる要素が満載なのだ。英国のお父さんたちはきっと毎週このドラマを楽しみにしているに違いない。

ところでこのドラマは至って真面目に作られているのだが、私にはちょっと笑ってしまうポイントがいくつかある。それは、警察署内の人間関係の話が大半なのに、「24」ばりのカメラワークであることと、主役の俳優が私の知り合いに似ていることだ。1話の冒頭はテロリストのアジトへの突入シーンなので、24ばりのカメラワークでもOKなのだが、警察署内の人間関係シーンでもズームとか臨場感あふれる手持ちカメラを多用するものだから、なんかシュール。また、主役の俳優は小柄かつ東洋人っぽい薄顔で小物感が強いー要するに主役感がなく、その上知り合いの○村君にそっくりなのにシリアスな演技をしているものだから、笑いを禁じ得ない。○村君にはほんと申し訳ないけど。

ただ、こうした違和感は2話では解消し、話に入り込めるようになった。人間のドロドロした部分を描きつつ、サスペンスもうまいこと盛り上げるから、まんまと術中に嵌ってしまっている。これからどう展開していくか楽しみだ。

『コラテラル 真実の行方』Collateral


英国のサスペンスドラマ。4話完結と短く、キャリー・マリガンが主演とあって、視聴を即決。彼女は特に、ライアン・ゴスリングと共演した「ドライブ」がいい。童顔でかわいいのに声が大人っぽくて、そのギャップが魅力だ。演技力も申し分ない。

見始めてすぐに、このドラマが4話しかない理由が分かった。キャリー・マリガンが妊婦だったのだ。私は若干の不安を覚えた。つまり、マリガンがキャスティングされた当時は妊娠していなかったが、後に妊娠したために脚本を短く書き換えたのではないかと。

そして、おそらくその不安は的中したと思われる。このドラマは移民、善と悪、ジェンダー、戦争など様々なテーマを扱っていて、背景も複雑だ。1話見ただけでは何の話なのかよくわからない。そういう意味では、いったいどう4話でまとめるのだろう、という興味に引っ張られて飽きずに見ることはできた。ただ、複雑な話なので、集中していないとすぐに分からなくなる(私がバカなのかもしれないが)

全て見終わって、やはり脚本は相当無理してまとめただろうことを確信した。キャリー・マリガンの出番も少なくてちょっとがっかり。妊婦をあまり酷使できないからしかたないか。それでも、彼女は階段を駆け下りたりして頑張っていたけれど。しかし、重いテーマを扱った力作になったはずなのに、何とも残念だ。せめてあと2話あったら、もう少し深みのある話になっただろうに。個人的には英国の政治に興味があるので、もう少し政治的駆け引きなんかを描いてほしかったなあ。

そんな残念な中で、女性大尉役のジャニー・スパーク(Jeany Spark)という女優が良かった。彼女は戦争でPTSDになった以外にもいろいろ悩みを抱えている役柄で、神経質でピリピリした感じを、微妙な顔の動きで絶妙に表現していた。これまでの出演作はテレビシリーズが多いようだが、もっと世に出てきてもおかしくない人である。

キャリー・マリガンが出産後にまた戻ってきてシリーズ化してくれればいいが、どうなることやら? 家族計画は綿密にね、と彼女にはいいたい。大きなお世話か。

『ピーキー・ブラインダーズ シーズン4』Peaky Blinders season 4


シーズン3のあとにナルコスを見て衝撃を受けたため、なんとなく4を見るのが億劫になっていた。でもやっぱり気になって、全6話をほぼイッキ見した。

やはり、なんだかんだ言ってヒットドラマだけあってそこそこよくできている。脚本は良く考えられているし、音楽や映像もおしゃれ。6話という短さも良かった。そして今回の話はニューヨークのイタリアンマフィアとの抗争が主軸となっており、マフィアのドン「ルカ」役にオスカー俳優エイドリアン・ブロディが配されているのも見どころのはず…だった。

はずだったのに。かりにも、ポランスキー映画で主演男優賞を取った役者だもの。期待していた。その分、失望も大きかった。なぜなのかはとにかく見てもらえばわかる。某大スターの物まねをしているのだ。「インスパイアされて」というレベルではない。ユダヤ系の彼には荷が重かったのだろうか?映画史上に残るあの名演に頼り、自分のものとしてアウトプットしようとしたのだろうが、全く失敗している。私には何か始終コントのように見えてしまって、白けてしまった。

それに対して、トム・ハーディーはやっぱり最高だった。変なユダヤ人醸造家を演じる彼は後半に少ししか出演しないが、相変わらず強烈な印象を残す。不気味で、恐ろしくて、わずかにコミカルのある絶妙な演技。とても英国を代表する二枚目俳優とは思えない(もちろんいい意味)。

今回のシリーズは決してつまらなくはないのだが、役者の芝居について以外は語る気になれない。ナルコスを見てしまった今、私の中でピーキーブラインダーズは平凡なドラマに格下げされてしまった。ナルコスを超えるギャング/マフィアものなんてこの先出て来るのだろうか? ピーキーはシーズン5も作られるようだが、見ないかもしれない。トム・ハーディーも出ないだろうし。

ギャング/マフィアものはしばらくお腹いっぱいかな…