
戦前のドイツで活躍した歌手という設定だが、いまは落ちぶれ、過去の栄光を頼りに、フリークスたちをスカウトしては、自らがショーの女王に君臨したいと願っている。フリークスを愛すると同時に、自分より人気が出ると嫉妬で怒り狂い、涙が厚化粧の頬を伝う。人間の醜さを、これほどゴージャスに演じることのできる女優はいるだろうか。
アメホラに出て来る人物(キャラクター)たちは、みな深い闇を抱え、どこかネジが外れている。ジェシカ・ラング演じる女主人自らが、過去、スナッフフィルムの犠牲になり、両足を切断されているという設定だ。だが、それぞれがなんと魅力的なことだろう。

アメホラゆえに、容赦ない残虐なシーンが続く。だが不思議なことに、その残虐さまでが愛おしく思えて来る。スタイリッシュなホラーなので、殺戮までが美しいのだ。そして物語は、奇妙なハッピーエンド(たぶん)を迎える。そこにあるのは、圧倒的な肯定感だ。その肯定感に包まれた、ジェシカ・ラングのラストショットは息をのむ。

ともすればB級に陥りがちな設定で、強烈過ぎるキャラクターたちが絡み合う複雑な物語を、伏線を回収しながら破綻することなく最後まで語り終えるシナリオは素晴らしく、だからこそ有名女優たちが怪演できるのだろう。そのクオリティの高さにも圧倒される。
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