まず、日本の警察・司法関係者全員に、このドキュメンタリーの視聴を義務付けて欲しいと本気で思う。捜査とは何か、司法とは何かについて、これほど分かりやすく、面白く、問題提起をしている作品を他に知らないからだ。
アメリカ・ウィスコンシン州の片田舎に住むスティーヴン・エイヴリーは、強姦罪で刑務所に入れられた。やがて科学技術が進歩し、DNA検査によって潔白が証明され、18年後の2003年に釈放された。彼は一躍時の人となり、彼の名前が付いた法案が可決されるほどまでになったが、2005年にまたもや逮捕されることとなる。今度は殺人罪で。
この作品は一貫してスティーヴンが無実であるという立場で作られており、そのスタンスに賛否両論あるだろう。しかし、その立ち位置云々は抜きにして、下手なフィクションを軽く凌駕する面白さなのだ。
制作者は10年に渡る、関係者の証言、通話記録、証拠写真、尋問ビデオ、法廷記録、文書等々、膨大な量の素材を緻密に編集し、手に汗握る「サスペンスドラマ」を作り上げた。私達は、1話進むごとにスティーヴンに感情移入し、「狡猾な」警察や検察に腹を立て、弁護士を心から応援するようになっていく。
警察は、スティーヴンの甥ブレンダンにも共犯の罪を着せようとして、強引な取り調べを行う。これを観ていて、志布志事件を思い出した。公職選挙法違反の冤罪事件で、罪の重大さではエイヴリー事件に及ばないが、警察が最初から犯人を決めつけて、誘導的で強引な取り調べを行った点は同じである。他に、厚労省の村木厚子局長が、大阪地検によって無実の罪を着せられたことも記憶に新しい。日本では、取り調べや裁判の様子が可視化されていないため、アメリカよりも冤罪事件は多いかもしれない。
アメリカでは「殺人者への道」が大変な反響を呼び、スティーヴンの恩赦を求める署名が20万件集まったという。ここまで真に迫ったドキュメンタリーを作ることができるのは、取り調べや裁判が可視化され、何もかもが記録に残されているからだ。また、みな顔出しでよくしゃべる。映像や音声の素材は本当に豊富だ。しかし、何もかもが記録されているのにもかかわらず、冤罪は起こりうるということにまた、恐ろしさを覚える。
スティーヴンは、町で他者と交流せず孤立しているエイヴリー家の一員だ。若いころには逮捕歴が複数回、収監されたこともある鼻つまみ者でもある。彼のそうしたバックグラウンドが、町の人々や警察に先入観を持たせている。さらに、警察・検察は、スティーヴンの冤罪が証明されたことでメンツを潰されている。翻って私達は、果たしてそうした先入観や個人的な恨みを排除して、公正に物を見ることができるだろうか?
ジャーナリズムも問題だ。判決が下されるまでは推定無罪のはずなのに、マスコミは犯人と決め付けてセンセーショナルな報道をする。これが陪審員の心証にも影響している。日本でもこの状況は全く同じである。本当に様々なことを考えさせられる作品だ。
この事件は現在進行形であり、それが作品の話題性に拍車をかけている。シーズン2も作られることが決定しているという。
アメリカ・ウィスコンシン州の片田舎に住むスティーヴン・エイヴリーは、強姦罪で刑務所に入れられた。やがて科学技術が進歩し、DNA検査によって潔白が証明され、18年後の2003年に釈放された。彼は一躍時の人となり、彼の名前が付いた法案が可決されるほどまでになったが、2005年にまたもや逮捕されることとなる。今度は殺人罪で。
この作品は一貫してスティーヴンが無実であるという立場で作られており、そのスタンスに賛否両論あるだろう。しかし、その立ち位置云々は抜きにして、下手なフィクションを軽く凌駕する面白さなのだ。
制作者は10年に渡る、関係者の証言、通話記録、証拠写真、尋問ビデオ、法廷記録、文書等々、膨大な量の素材を緻密に編集し、手に汗握る「サスペンスドラマ」を作り上げた。私達は、1話進むごとにスティーヴンに感情移入し、「狡猾な」警察や検察に腹を立て、弁護士を心から応援するようになっていく。
警察は、スティーヴンの甥ブレンダンにも共犯の罪を着せようとして、強引な取り調べを行う。これを観ていて、志布志事件を思い出した。公職選挙法違反の冤罪事件で、罪の重大さではエイヴリー事件に及ばないが、警察が最初から犯人を決めつけて、誘導的で強引な取り調べを行った点は同じである。他に、厚労省の村木厚子局長が、大阪地検によって無実の罪を着せられたことも記憶に新しい。日本では、取り調べや裁判の様子が可視化されていないため、アメリカよりも冤罪事件は多いかもしれない。
アメリカでは「殺人者への道」が大変な反響を呼び、スティーヴンの恩赦を求める署名が20万件集まったという。ここまで真に迫ったドキュメンタリーを作ることができるのは、取り調べや裁判が可視化され、何もかもが記録に残されているからだ。また、みな顔出しでよくしゃべる。映像や音声の素材は本当に豊富だ。しかし、何もかもが記録されているのにもかかわらず、冤罪は起こりうるということにまた、恐ろしさを覚える。

ジャーナリズムも問題だ。判決が下されるまでは推定無罪のはずなのに、マスコミは犯人と決め付けてセンセーショナルな報道をする。これが陪審員の心証にも影響している。日本でもこの状況は全く同じである。本当に様々なことを考えさせられる作品だ。
この事件は現在進行形であり、それが作品の話題性に拍車をかけている。シーズン2も作られることが決定しているという。
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