年を取るごとに時間が早く過ぎるというが、これは単なる主観ではなく、数学的に理屈が通っている。2歳にとって1年は一生の半分だが、100歳にとっては生きているうちの100分の1の期間でしかない。早く3年生になりたいなー、と思っていたあのころは確かに1年が異様に長かった。今思えば、先生の物まねをしたり、自作の漫画を友達に見せたり、駄菓子屋で買った爆竹を道路にばらまいたり(良い子は真似をしないでね)、くだらないことばかりして時間を潰していたが、それでも1年はなかなか過ぎていかなかった。大人になってからは、くだらないドラマや映画を見るたびに時間を損したと思ってしまうが、考えてみればたかだか1時間や2時間のことで、それは若いころの1時間よりも「短い」1時間なのだ。だからこれからはくだらないドラマや映画を見てもいちいち後悔しないようにしよう。もし見てしまったとしてもここに不満を書くことができるのだし。
以上、とりとめもなく一年の抱負を述べた。なお今のところ、ライン・オブ・デューティーは自分の中では面白いドラマの範疇にある。最初は英国版半沢直樹か?と思ったが、スカッと終わらないところが全然違った。香川照之の土下座シーンのような溜飲が下がる場面はないのである。ネタバレになるので、核心には触れないでおく。
今回、汚職捜査課「AC-12」ターゲットとなるのは、数々の賞を受けている優秀な黒人警部だ。奥さんは金髪の白人で、愛人も美人で金持ちの白人、黒人特有のアクセントはみじんもなく、成功した黒人男性の典型のような人である。部下にも慕われている。周りが白人だらけの職場で成功するのは並大抵なことではなく、相当優秀なはずだ。優秀でなおかつ黒人だということは、相手にするとやっかいだということを意味している。こっちが下手を打つと「差別だ」と言われてしまう恐れがある。それに、あらゆる犯罪のやり口を熟知している上に如才なく出世する能力があるのだから、証拠隠滅や捜査かく乱、人心掌握はお手の物である。AC-12はこの黒人警部に手を焼き続けることになる。
しかし、私はこの黒人警部役の俳優はミスキャストだと思っている。優秀な切れ者を演じるのなら、デンゼル・ワシントンみたいな役者がよかったのだが、この人の容貌はどちらかというとサミュエル・L・ジャクソン寄り。そして、芝居があまりうまくない。ただでさえ美男美女が少なくて、英国特有の辛気臭い雰囲気が漂っているのだから、役柄にぴたっとはまった実力のある役者をキャスティングして欲しかった。
とはいっても、なかなか飽きさせない演出で、あっという間に5話を見てしまった。相変わらず変な手持ちカメラ風カットが多いが、まあ許容範囲。テンポがいいのは評価できる。そしてなにより、組織内政治という万人受けするテーマを上手く料理できたのがこのドラマの勝因だと思う。私自身は組織人だったことが数年しかないが、会社で一番盛り上がる「祭り」が人事異動であることは承知している。人事情報に異常に詳しいおじさん社員がいて、いつも誰よりも早く異動情報をどこからか持ってきたものだ。情報を早く手に入れたところでメリットがあるわけでもないのだが、その情報を基に社内のパワーバランスについてあれこれ噂するのが、サラリーマンにとって最も面白い娯楽なのだから仕方がない。サラリーマンは自分の組織が全てなのだ。ライン・オブ・デューティーは組織内政治の世界をシーズン2以降も追及していけているのだろうか? 日本でも「ポスト半沢直樹」はまだか?と期待する向きもあるだろうが、サラリーマンドラマよりも財務省ドラマを見ている方が面白くて視聴率を稼げるのだから手に負えない。
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