Netflixのオリジナルで、今年のサンダンス映画祭の審査員グランプリ受賞作。

物語は前半、淡々と進む。不器用で少々情けない中年男女が淡い恋愛関係を築きつつ、協力しながら犯人の核心に迫っていく。それは、コーエン映画からハードボイルドさと毒気を除いて、親近感をプラスしたような描き方と言ったらよいだろうか。出てくる人たちが皆「ビミョーな」感じなのだ。私は、このままオフ・ビートな人間ドラマが粛々と続いていくのだろうか?と思いながら見ていた。
ところで、エコー&・ザ・バニーメンの「Bring on The Dancing Horses」が流れるシーンがある。私が昔好きだったバンドの曲だ。突然懐かしさと切なさが襲ってきて、一時ストーリーが頭に入らなくなった。全然関係ない話だが、先日西友スーパーで買い物をしていたら、突然バニーメンの「The Killing Moon」が流れてきたことがあった。あまりにも久しぶりに聞いたもので、「うぉおおお!懐かしい!!でも、こんなエッジィな曲がなぜに西友で?」と、一人あたふたしてしまった。挙動不審だったに違いない。それで、よくよく聞いてみると、80年代ブリティッシュロックが次々に流れているのである。西友は有線のブリティッシュロック専門局と契約しているのであろうか?だとしたらなかなかパンクだ。
(以下ややネタバレあり。この映画は一応「スリラー」なので注意!)
話を元に戻そう。
こうして、この映画の3分の2ぐらいは淡々と進んでいくのだが、ある事件をきっかけに、急激な場面転換が起きる。そしてここからが怒涛の展開となる。全く予期していなかったため、その畳み掛けるようなバイオレンスとグロ描写にあっけにとられてしまう。ルースは生きるか死ぬかの瀬戸際に追い込まれ、正義感の強いトミーも巻き込まれてしまい…
最初はチマチマした人間ドラマかと思いきや、終わってみれば堂々たるエンターテインメントであった。そして私個人にとっては、ことのほか「突然」が多い映画だった。脚本・監督は、これが初監督作品となるメイコン・ブレア。初監督作にしては思い切りのいい構成に打って出た。そしてそれは吉と出たようだ。
ただ一点、個人的な好みを言わせてもらうと、もうちょっと映像がきれいな方がいいかな。