
コメディ映画のヒットメーカー、ジャド・アパトーが仕掛ける恋愛コメディは、限りなくウディ・アレン的だ。気の利いたことを喋りまくるガス(ポール・ラスト)と、美人だけど自分勝手なミッキー(ジリアン・ジェイコブス)の恋物語。舞台はLA。ガスは、撮影スタジオで生意気な子役の家庭教師を務め、ミッキーは小さなラジオ局に勤務している。
2人は「ひょんなことから」出会い、ウディ・アレン的に恋愛が進展するが、ウディ・アレン的にぎくしゃくし始める。一言でいえば、このドラマの真髄は、この「ぎくしゃく」さ加減にある。2人の仲が「ぎくしゃく」する。元カレと「ぎくしゃく」する。親との関係が「ぎくしゃく」する。職場の同僚やルームメイトとの関係が「ぎくしゃく」する。
殺人は起こらない。武器も出て来ない。血も出ない。ゾンビも登場しない。超常現象も起こらない。出て来るのは、ちょっとした変人たちだ。退屈なのだが、変哲もない日常生活が「ぎくしゃく」するだけで、なんとなく退屈ではなくなり、ドラマになってしまう。優れたドラマは、ジャンルにかかわらず、人間関係が「ぎくしゃく」しているものだ。

視力が不安定なせいか、恋愛コメディを見ても思考力があまり働かない。そもそも恋愛コメディを見て、なにかを考える必要はないのだろう。「ぎくしゃく」しているけど、2人は結局、相性がいいのかな、と思うだけだ。ウディ・アレン的ではあるけれど、しつこさはそれほどない。じっとしながら「ラブ」を見ていたら、夏が終ってしまった。