Netflix水曜はじまり日記 Vol.5

4月18日・水
 歯科で治療。保険が効かない治療。『ブラックリスト』シーズン2の第20話の続きを見る。過去の真実は知るべきなのか。でも真実とは象みたいなもので、かたちは一定だけれど、触る箇所によって象(真実)の姿は違ってくる。だから真実なんてものはどこにも存在しないのではないかと思う。でも、たとえ虚像であっても真実が知りたい気持もわかる。真実を知らなくてもいい場合もたくさんあるが。

4月19日・木
 スターバックスのOne more Coffeeが150円に値上がりしていて驚く。今日はNetflixにアクセスする余裕がない。かわりに銀色夏生の『つれづれノート32』を少し読む。長年愛読しているシリーズで、これもまた日記なのだ。公表される日記だから肝心なことは書かれてないが、肝心なことを書いていないというわけでもない。

4月20日・金
 面倒な仕事ほど、テキパキと片付けられないのはなぜなのか? と疑問に思う。テキパキ片付けられないから面倒なのか。『ブラックリスト』シーズン2の第21話を見る。どれだけ見ても、『セックスと噓とビデオテープ』の長髪のジェームズ・スペイダーと、『ブラックリスト』の禿坊主のジャームズ・スペイダーが結びつかない。髪の毛だけの問題なのか? それとも案外、繊細さと傲慢さの演技は鏡のウラオモテなのか。

4月21日・土
 ANAで札幌へ。機内のWi-Fiが無料になったが、動画は見ることができない。空港から札幌への移動中に『ブラックリスト』シーズン2の最終話(第22話)を見る。シーズン2の最後に大きなクリフハンガーが仕掛けられている。想定内だが、気になって仕方がない。札幌ではいま“〆パフェ”が流行っているという。飲んだあとにラーメンではなくパフェなのだ。専門店があり深夜に行列らしい。札幌グランドホテルに泊まる。

4月22日・日
 札幌は晴れているが、外は肌寒い。チェックアウトまで部屋で仕事。続きが気になり、『ブラックリスト』シーズン3に突入してしまう。リズとレディントンが一緒に行動するようになって物語のテンポが上がる。脚本がやや雑になった感もあるが、加速度があるので見続ける羽目に。ご都合主義的な展開が『24』に似てきて、ドラマとは本来こうあるべきなのか? という葛藤も生まれる。リアリティと物語の求心力は両立しないのか。

4月23日・月
 昨日から今日にかけて、『ブラックリスト』シーズン3の第12話までイッキ見。この手のドラマの典型的なパターンを踏襲しているが、それもまたよしと考えよう。世界を覆すような大陰謀に立ち向かうのが、FBIの総力をあげてたった3、4人という不自然さにも、あえて突っ込まない。今回でその大陰謀がひとまず決着、新展開に期待しよう。


4月24日・火
 夜、神楽坂で雨に降られる。『グレイス&フランキー』シーズン1の第3・4話を見る。ジェーン・フォンダが、カミングアウトしたゲイの夫に離婚された妻を演じているが、本物のセレブだけに、セレブの役柄が板についている。でも、だとしたらセレブの生活も寂しいものだと思う。多くの映画やドラマが、人生でいちばん大切なものは「愛」だと声高に叫んでいるのだが、それを自分の人生で実行している人は、案外少ないのかも。

Netflix水曜はじまり日記 Vol.4

4月11日・水
 夕方、やっと事務所にたどり着く。移動中に『シャーロック』シーズン1の第2話の後半を見ていて、一駅乗り過ごして引き返す。第2話は、謎解きが強引過ぎていまいち。引き続き、新藤兼人の『「断腸亭日乗」を読む』を読んでいるのだが、その中に終戦間近、関西に疎開した谷崎潤一郎の記述がある。原爆が投下され、空襲が相次ぎ、世の中が騒然としている中で、『細雪』を書いていたという事実に驚く。戦時体制にこんな小説はけしからん、と当局から執筆停止をくっていたにもかかわらず。

4月12日・木
 時間はつくるものと言うけれど、その時間をつくる時間がない。東京地裁のロビーで、『ブラックミラー』シーズン2の第4話「ホワイト・クリスマス」を少し見る。名作ドラマ『マッドメン』で、エミー賞の主演男優賞を取ったジョン・ハムが出ている。この人の低音の声は独特で、不思議な魅力がある。顔もレトロで独特なのだが。人が成功する理由の半分は声にあると常々考えているので、このドラマはそれだけで十分に魅力的だ。

4月13日・金
 昼間はランチを食べる暇もなく。ぐったり疲れる。夜、事務所の月イチ開催の「Bar」で飲む。飲み物や食べ物は各自持ち込み。むかし小学校の校門の前で、色のついたヒヨコを売っていたおじさんがいたという話で盛り上がる。どんだけ昔なのか。帰り道、『ブラックミラー』の昨日の続きを“細切れ”で見る。こんな調子なので、なかなか見終わらない。 

4月14日・土
 秩父宮でサンウルブスの試合。惨敗。サッカー日本代表のように監督が選手たちをマネジメントできていない? ラグビーW杯は来年なのに。世界と言えば『池澤夏樹の世界文学リミックス』(河出文庫)を読み始める。この人の書くものは、何故かあまり印象に残らない。が、今回はその本の中で紹介されていた、バルガス・リョサの『楽園への道』を読みたくなった。ゴーギャンと祖母の話らしい。へえ。

4月15日・日
 ランドリーの乾燥機の前で、『ブラックミラー』シーズン2の第4話をようやく見終わる。1話完結のドラマだが、英国らしく各話とも皮肉さに満ちている。このドラマのテーマは要するに「近未来、テクノロジーの進化で、人生は豊かになるのではなく、逆に追い詰められる」というものだ。現実ですら、パソコンやスマホの進化で仕事は楽になるはずなのに、逆に忙しくなっている。なぜ人間は、人間性を奪うものを進化と呼ぶのか? 

4月16日・月
 最近、複数のドラマを並行して見ているため、気が散ってストレスを感じている。少なくとも1シーズンは見続けよう、と反省。なので、まずは『ブラックリスト』のシーズン2を最後まで見ようと決意。シーズン2の第18話を見る。しばらくブランクがあったので、誰が“黒幕”なのか混乱してしまうが、気にしないで見よう。

4月17日・火

 朝から都内や埼玉をあちこち移動。満員電車にめげずに『ブラックリスト』シーズン2の第19話を見始める。メインのストーリーが動き出したので、イッキ見の機運が高まる。やはりドラマは続けてみないとダメだと再認識する。ここにきて主人公の出生の秘密、つまり物語のセントラル・ミステリー(秘められた過去の謎)に焦点が移り、物語が加速し始める。家に戻ってからも、引き続き第20話を見る。アメリカでは持続力のあるドラマ企画を「has legs(脚がある)」と言うらしいが、まさにそんな感じだ。

『ライン・オブ・デューティー』 シーズン1, Line of Duty Season1 組織人の悲哀

また一つ年を取ってしまった。
「ラインオブデューティー」の画像検索結果

年を取るごとに時間が早く過ぎるというが、これは単なる主観ではなく、数学的に理屈が通っている。2歳にとって1年は一生の半分だが、100歳にとっては生きているうちの100分の1の期間でしかない。早く3年生になりたいなー、と思っていたあのころは確かに1年が異様に長かった。今思えば、先生の物まねをしたり、自作の漫画を友達に見せたり、駄菓子屋で買った爆竹を道路にばらまいたり(良い子は真似をしないでね)、くだらないことばかりして時間を潰していたが、それでも1年はなかなか過ぎていかなかった。大人になってからは、くだらないドラマや映画を見るたびに時間を損したと思ってしまうが、考えてみればたかだか1時間や2時間のことで、それは若いころの1時間よりも「短い」1時間なのだ。だからこれからはくだらないドラマや映画を見てもいちいち後悔しないようにしよう。もし見てしまったとしてもここに不満を書くことができるのだし。

以上、とりとめもなく一年の抱負を述べた。なお今のところ、ライン・オブ・デューティーは自分の中では面白いドラマの範疇にある。最初は英国版半沢直樹か?と思ったが、スカッと終わらないところが全然違った。香川照之の土下座シーンのような溜飲が下がる場面はないのである。ネタバレになるので、核心には触れないでおく。
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今回、汚職捜査課「AC-12」ターゲットとなるのは、数々の賞を受けている優秀な黒人警部だ。奥さんは金髪の白人で、愛人も美人で金持ちの白人、黒人特有のアクセントはみじんもなく、成功した黒人男性の典型のような人である。部下にも慕われている。周りが白人だらけの職場で成功するのは並大抵なことではなく、相当優秀なはずだ。優秀でなおかつ黒人だということは、相手にするとやっかいだということを意味している。こっちが下手を打つと「差別だ」と言われてしまう恐れがある。それに、あらゆる犯罪のやり口を熟知している上に如才なく出世する能力があるのだから、証拠隠滅や捜査かく乱、人心掌握はお手の物である。AC-12はこの黒人警部に手を焼き続けることになる。

しかし、私はこの黒人警部役の俳優はミスキャストだと思っている。優秀な切れ者を演じるのなら、デンゼル・ワシントンみたいな役者がよかったのだが、この人の容貌はどちらかというとサミュエル・L・ジャクソン寄り。そして、芝居があまりうまくない。ただでさえ美男美女が少なくて、英国特有の辛気臭い雰囲気が漂っているのだから、役柄にぴたっとはまった実力のある役者をキャスティングして欲しかった。

とはいっても、なかなか飽きさせない演出で、あっという間に5話を見てしまった。相変わらず変な手持ちカメラ風カットが多いが、まあ許容範囲。テンポがいいのは評価できる。そしてなにより、組織内政治という万人受けするテーマを上手く料理できたのがこのドラマの勝因だと思う。私自身は組織人だったことが数年しかないが、会社で一番盛り上がる「祭り」が人事異動であることは承知している。人事情報に異常に詳しいおじさん社員がいて、いつも誰よりも早く異動情報をどこからか持ってきたものだ。情報を早く手に入れたところでメリットがあるわけでもないのだが、その情報を基に社内のパワーバランスについてあれこれ噂するのが、サラリーマンにとって最も面白い娯楽なのだから仕方がない。サラリーマンは自分の組織が全てなのだ。ライン・オブ・デューティーは組織内政治の世界をシーズン2以降も追及していけているのだろうか? 日本でも「ポスト半沢直樹」はまだか?と期待する向きもあるだろうが、サラリーマンドラマよりも財務省ドラマを見ている方が面白くて視聴率を稼げるのだから手に負えない。

Netflix水曜はじまり日記 Vol.3


月4日・水
 夏のような陽気。都内を移動しながら、Netflixでドキュメンタリー映画『コルトレーンを追いかけて』を見る。天才を語る人々の言葉の豊穣さに圧倒される。偉大なアーティストは、それを語る人々の言葉にすら価値を生み出すのだと、あらためて思う。コルトレーンの祖父は聖職者だった。ビル・クリントンも彼のファンだった。番組の最後の方に、日本への演奏旅行のエピソードがあり、彼が長崎の爆心地で祈りを捧げ、空を見上げたというシーンがある。有意義な人生とは何か、を考えさせられる。

4月5日・木
 今日は肌寒い。都内を移動、時々歩きながら『サンタクラリータ・ダイエット』シーズン1の第4話を見る。話がどう展開していくのか不安だったが、ようするにこの物語は、“人間の本質は変えることができるのか?”がテーマであることを理解。妻のゾンビ化はそのテーマを追求する設定に過ぎないのだ。と思ったら、俄然面白くなってきた。夫役のティモシー・オリファントの取り繕う笑顔が面白い。日本人の配役なら船越英一郎か。

4月6日・金
 北参道と関内を往復。往路は岩波文庫『ゲーテとの対話(上)』を読む。エッカーマンという青年がゲーテの家を訪れてひたすら話を聞くという設定の本。1823年、まだビデオもICレコーダーもなかった時代、どのように対話を再現したのかと思う。
 復路はなんと、『ER』シーズン1の第1話を半分見る。Netflixでシーズン15(!)まで公開されている。ところどころ見ていたドラマだが、今後続けて見るかどうかは不明。先日、手っ取り早くシーズン15から逆に見ているという人に出会った。シーズンを遡るごとに出演者が皆若くなってゆくのが面白いという。そんな見方もあるのかと驚く。夜は神宮球場にスワローズの応援に。ジャイアンツに完勝。東京音頭をたくさん歌う。

4月7日・土
 朝、外苑を走る。さすがに外を走りながらNetflixは見ることができない。早くサングラスの内側でNetflixが見えるようになればと思う。タイガーウッズが復活したので、数年ぶりにマスターズ中継を見る。その合間に『ER』シーズン1の第1話の残り半分を見る。ジョージ・クルーニーが若い。番組開始が1994年で、ソニーが家庭用ゲーム機プレイステーションを発売した年だ。ちなみにタイガーがマスターズに初出場したのが1995年。そんな昔なのに、ドラマのテンポに時代を感じさせない。

4月8日・日
 一生懸命何かをラップで歌っている夢を見る。きょうも日曜日なのに仕事。ラジオからジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」が流れて来る。瞬間的にマイブームとなり、そのセルフカバー曲が使われている英国の映画、『ラブ・アクチュアリー』がNetflixで配信されていたので、好みの映画ではないが見てしまう。群像劇という以前に、感情移入が難しい映画だが、楽曲が使われているシーンだけはよかった。

4月9日・月
 検査の日なので、朝から夕方まで食事ができない。電車の中、待合室で、『シャーロック』シーズン1の第2話を半分見る。いま気づいたのだが、このドラマの1話は90分ほどある。それで1シーズンが3〜4話構成なのだ。なので、前半と後半に分けて見ることにする。もう一つ気づいたのは、『シャーロック』は、移動しながら見るタイプのドラマではないということだ。推理のアプローチが緻密なので、見る側も集中力が必要なのだ。


4月10日・火

 朝から多忙、移動中は資料を読まなければならず、Netflixを見ることができない。夜の11時、まだ事務所にいる。帰り道に何か視聴できるかもしれないが、さすがに疲れている。ジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」を何度も聴いている。オリジナルとは違ってオーケストラがバックなので、なんだかミュージカル音楽のよう。心に滲みる。

Netflix水曜はじまり日記 Vol.2

 3月28日・水
 巣鴨から吉祥寺への移動中、『シャーロック』シーズン1の第1話を見始める。言わずと知れた名作だが、食わず嫌いで見ていなかった。冒頭の1分で、これは良いドラマだとわかり、中毒性があることも自覚する。テンポが小気味良い。半分ほど見て、電車を降りる。吉祥寺は自分にとってかつてのホームグラウンドだが、近ごろは自由ヶ丘化していて違和感がある。およそホームズが活躍しそうにない、陰影のない白々とした街並だ。

3月29日・木
 六本木から新宿への移動中、『サンタクラリータ・ダイエット』シーズン1の第3話を見る。ゾンビになって人を喰らう妻となっても、愛し続ける夫が健気なのだが、自分がこのドラマの脚本家チームにいたら、早くも煮詰まっていると思う。この話一体どうするの? と心配になるが、まだまだドラマは続く。アメリカ人はやはり肉食なのだ。食にまつわることで言えば、ベーカリー『PAUL』で売っているエスカルゴ・レザンが美味しいことを発見。デニッシュペストリーはフランス直輸入の生地を使用しているらしい。

3月30日・金
 原宿から用賀への移動中、『シャーロック』第1話の後半を見る。ほどよい劇画調で、イギリス英語が耳に心地よい。話を盛り込みすぎないバランスも良く、期待は裏切られない。主人公の相手役はワトソンなので、いわゆるヒロインが見当たらない。二人はゲイなのか? 今日からプロ野球が開幕。今年は地元のスワローズファンになると決めたので、ベイスターズとの試合をBSで観戦。メジャー帰りの青木も打点をあげ幸先よく1勝。

3月31日・土
『グレイス&フランキー』シーズン1の第1話を見始める。こちらは2組の熟年(というか老年?)カップルの離婚がテーマだが、離婚の理由は夫たちがゲイであることをカミングアウトして、一緒に暮らし始めるから。主演はジェーン・フォンダ、夫役はマーティー・シーン。往年の大スターが醸し出すレトロな雰囲気が心地よい。老齢を隠すことなく演技するジェーン・フォンダは格好いい! いまだ現役バリバリで、Netflixのオリジナルドラマに出演すること自体に驚く。なにしろベトナム反戦運動をしていた女優である。シーズン5まで続いている。かなり見応えがありそうだ。
 
4月1日・日
 今日はエイプリールフール、と書くと。いかにも日記っぽい。日曜なのに仕事。仕事の合間にジムで走りながら『ラブ』シーズン3の第2話を見る。ガールフレンドのミッキーが仕事絶好調なのに、ガスは仕事場で皆が自分の悪口を言っているのを聞き、むしゃくしゃして車を派手にぶつけてしまうが、何事もなかったように振る舞うという今回もトホホな展開。ちっぽけなプライドが涙を誘う。岩波現代文庫で新藤兼人の『「断腸亭日乗」を読む』を読んでいる。ちなみに100歳で亡くなった新藤兼人の遺作は、99歳のときの作品だ。ジェーン・フォンダの活躍もそうだが、“古い映画人”の生き抜く力に感嘆する。

4月2日・月
 いろいろ忙しくNetflixを見ない日だった。こんな日もある。新藤兼人が脚本家の立場から、こんなことを書いている。「たとえば“歩いて行く”といったら、後ろ姿なんです。“歩いて来る”といったら前から写している。“歩いている”といったら、横からの観察、シナリオというのはそういうことを伝えようとして書くわけです」。なるほどと思う。

4月3日・火 

 新橋から新宿への移動中、『ブラックリスト』シーズン2の第17話を見る。アメリカのこの手のドラマの予定調和的な話の展開に、やや飽きて来た。今回はとくに展開がベタで、ジェームズ・スペイダーの“どや顔”が控え目だったせいかもしれない。常に後手を踏むFBIの間抜けさ加減にもうんざりするが、テキパキ事件を解決したらそれはそれで話が続かなくなるので、仕方がないのか。仕事のためビジネス書を大量に読む必要があり、これもまたうんざりする。この手のほとんどの書籍は、要点がほぼ1ページに収まると思う。

Netflix 水曜はじまり日記 Vol.1

3月21日・水
 雪まじりの雨。祝日にもかかわらず仕事で体調が悪い。疲れ切って眠る前に、『ラブ』シーズン3の第1話を見る。相変わらずウディアレンそっくりの主人公ガスが “気まずい”トラブルを連発。今回は友人と一緒に行く週末旅行の話で、彼女にSEXを断られてバスルームでスマホのポルノ動画を見ながらマスターベーションに励むのだが、Bluetoothでスピーカーにその音声が増幅され、皆が困惑すると言うトホホな展開。お約束のガスの気まずい言い訳も『ラブ』の持ち味で、思わず笑ってしまう。

3月22日・木
 多和田葉子の『言葉と歩く日記』を読む。彼女は毎日移動しながら言葉について深い考察を行っている。自分も移動しながらiPhoneNetflixを見ることが多いので、このブログもいわば『Netflixと歩く日記』なのだが、考察の深度はずいぶん浅い。考察する時間がないことを言い訳にしたい。『ブラックリスト』シーズン2の第8話を見る。このドラマを見続けている理由は、人を小馬鹿にしながら説教する腹黒いジェームズ・スペイダーの笑顔が魅力的だから。つい真似をしたくなり、鏡の前で少し練習する。

3月23日・金
 亡くなったはずの星野仙一が、講演会で聴衆のオバサマたちにバレリーナのように片足立ちでポーズをとり、写真を撮らせている夢を見る。意味が不明。移動中の電車内で『ハイライフ』シーズン2の第1話を見る。合法大麻の店舗が舞台のコメディだが、相変わらずキャシー・ベイツが怪演。本当にどうでもいいエピソードが満載で、脳がしびれてくる。大麻を吸ってハイになれば人生は素晴らしいというシンプルな設定が素晴らしい。

3月24日・土
 秩父宮でサンウルブス対チーフスの試合を見る。外苑の桜が満開。ワインとクッキーで観戦。試合は完敗だった。新しいドラマを開拓しようと思い、いくつか予告編を見て、『サンタクラリータ・ダイエット』を選択。シーズン1の第1話。ある日、妻(ドリュー・バリモア)が大量のゲロを吐き心臓の鼓動がなくなるが、大胆で自由な人格(ゾンビ)に変身し、夫と娘が悲惨な騒動に巻き込まれてゆくというコメディ。こう書くと変哲もないB級ドラマなのだが、演出に独特の “間”があって期待を抱かせる。

3月25日・日
 明治神宮の芝生広場で、片岡義男のエッセイコレクション『僕が書いたあの島』を読む。あの島とはハワイのこと。本の中にホノルルの公園の芝生の上で『アメリカの鱒釣り』を読むシーンがあったので、久しぶりにブローティガンを読みたくなる。『サンタクラリータ・ダイエット』シーズン1の第2話を見る。クールな娘役のリヴ・ヒューソンが面白い。配信はシーズン2まであるが、どうやって続いていくのかちょっと心配になってきた。
  
3月26日・月
 ジムで走りながら、『メンタリスト』シーズン7の第10話を見る。祭りが終った後のような寂寥感が漂うシーズン7だが、今回はその中でもひときわ悲しいストーリー。思えば海外ドラマを本格的に見はじめたのがメンタリストなので、あと3話で終ってしまうと思うと哀しい。面白い長編小説を読み終える感じに近い。シーズン1では若かったサイモン・ベイカーも歳を重ねたものだとしみじみ。残りはゆっくり噛み締めるように見よう。

3月27日・火
 1週間前は雪が降ったが、今はもう春のような陽気。仕事の合間に“佐川前長官の証人喚問”を見るが、つまらない役人の答弁に辟易する。気を取り直して、『デヴィット・レターマン・今日のゲストは大スター』を見る。オバマ元大統領、ジョージ・クルーニーときて、3回目のゲストは“ノーベル賞をとった少女”マララさん。彼女と佐川前長官と比べると、羽衣をまとった天女と地獄を這いずり回る虫ケラくらい人間性に差がある。デヴィット・レターマンの質問はいつも率直で、その裏に相手への敬意があるから、ゲストも胸襟を開いて話せるのだろう。清冽な蒸留酒を飲んだような気持ちになる。